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特許紛争物語~おにぎりパック事件最終話「奇跡のクロスライセンス」~/教育機関支援機構 弁理士 瀧川 彰人

  • 特許(発明)
  • 契約/紛争

 近藤パリ子から特許権の侵害だと警告された芹沢ノリオは、対抗手段として、無効審判の請求と先使用権の主張を試みた。しかし、いずれの手段もパリ子に有利な判断が下され、ノリオはいよいよ窮地に追い込まれた。そのような状況で、近藤一派の近藤パリ子および土方弁理士と、芹沢一派の芹沢ノリオおよび新見弁理士の4人で、最後の対談が行われた。

パリ子「もういい加減、負けを認めて、侵害行為をやめてください、芹沢ノリオさん。これが最後の警告ですよ。これ以上やろうというのでしたら、出るとこ出ようじゃありませんか。」

ノリオ「うぐぐ、なんちゅう恐ろしいこと言うんや。無効審判もダメやし、先使用権もダメやし、もうどうでもええわ。絶対真似なんかしてへんのに。」

土方「直線状に並んだ複数のダイヤ型の孔、すなわちミシン目があるおにぎりパックの今後の販売の中止。これをのんでいただければ、訴訟にはしません。どうですか、芹沢ノリオさん。」

新見「芹沢社長・・・」

 ノリオは、半ば諦めて、涙目になりながら呆然とパリ子のおにぎりパックを眺めていた。そこにヒラメキの神様が降臨した。

ノリオ「あれ、このミシン目の一番端っこの部分、これ切り欠きちゃう?切り欠きはうちの特許やで!」(参考図B参照)

新見「芹沢社長、そうですよ!これは切り欠きです!つまり、近藤パリ子さんが芹沢社長の特許権を侵害しているんですよ!」

パリ子・土方「え!?」

パリ子「そんな、これはミシン目ですよ!土方先生、何とか言ってください!」

土方「えーと・・・(盲点だった、確かにミシン目の端は切り欠きといえる。)」

 このノリオの発見により、近藤・芹沢の両者が互いに互いの特許権を侵害していることが明らかになった。その後、4人は話し合い、土方・新見の両弁理士の提案により、両者間でクロスライセンス契約を結ぶことになった。これにより、両者は、互いの特許権を利用でき、ミシン目があるおにぎりパックと、切り欠きがあるおにぎりパックとを独占的に製造販売できるようになった(参考図A、B、C参照)。両者とも自社商品の販売継続が可能となった。

ノリオ「いやー、一時はどないなるかとおもたけど、まるうおさまったな。切腹せんですんだわー。なぁ近藤はん。」

パリ子「本当に。クロスライセンスは、ウィンウィンを築く魔法の契約みたい。ありがとう、土方先生、新見先生。これからもどんどん発明するぞ!」

新見「今も昔も士(サムライ)業は大変ですね、土方さん。」

土方「そうですね、ですが、その分やりがいもあります。これからも発明者を全力でサポートしていきましょう!」完

*第1話から第4話は日本弁理士会東海会のウェブページで読むことができます。

     

参考図A:パリ子の特許と商品/参考図B:ノリオの特許/参考図C:ノリオの商品

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