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発明・デザイン等の新規性喪失の例外規定~産業の発達のための救済~/弁理士 山田 稔

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 わが国の産業財産権制度の中で「特許・実用新案・意匠」において、出願より前に公開された発明・考案・デザインは原則として特許権・実用新案権・意匠権を受けることができません。しかし、学会発表、展示会への出展、刊行物への掲載などによって発明・考案・デザインを公開した後に、その発明・考案・デザインについて出願をしても、いっさい特許権・実用新案権・意匠権を受けることができないとすることは、発明者・考案者・デザイナーにとって酷な場合もあります。また、産業の発達に寄与するという特許法・実用新案法・意匠法の趣旨にもそぐわないといえます。
 このことから、特許法・実用新案法・意匠法では、特定の条件の下で発明・考案・デザインを公開した後に出願をした場合には、先の公開によってその発明・考案・デザインの新規性が喪失しないものとして取り扱う規定、発明の新規性喪失の例外規定(特許法第30条)や意匠の新規性喪失の例外規定(意匠法第4条)が設けられています。また、実用新案法においても、同様に特許法第30条の規定が準用(実用新案法第11条)されています。
 この制度は以前からあり、平成23年改正法において発明・考案・デザインの公開方法の多様化に対応して適用対象の拡大が行われ現在に至っています。また、平成30年法改正において例外期間が従来の6か月から1年に延長され、より有効に活用できるようになっています。この制度の詳細は、特許庁ウェブページからご確認ください。
 ここでは、本制度の基本について説明します。添付の図表をご覧ください。発明・考案・デザインが新規性を喪失する場合として、試験の実施、刊行物(書籍・雑誌・学会の予稿集など)に発表、インターネット(自社のHPや通販のウェブサイトなど)で発表、集会(学会・セミナー・投資家への説明会など)で発表、展示会(博覧会・見本市など)へ出品、実際に商品を販売・配布、記者会見やテレビ, ラジオで発表など、複数の事例を挙げています。
 なお、これらの公開は、原則として特許出願・実用新案登録出願・意匠登録出願をする権利を有する者の行為に限られます。つまり、原則として発明者・考案者・デザイナーですが、これらの出願する権利を譲り受けた者(企業など)も含まれます。また、出願する権利を有する者の行為が原則ですが、出願する権利を有する者の意に反して公開された場合も含まれます。但し、意に反して公開され事実を証明することが重要です。
 また、新規性喪失の例外規定の適用を受けるためには、新規性を失った日から1年以内に出願し、出願と同時に「新規性喪失の例外の適用を受けようとする書面」を提出する必要があります。更に、出願から30日以内に出願する権利を有する者の行為によって新規性を失ったことを「証明する書面」の提出が求められます。
 なお、新規性喪失の例外規定は、あくまでも例外規定であることに注意する必要があります。つまり、出願より前に公開された発明・考案・意匠(デザイン)は特許権・実用新案権・意匠権を受けることができない、という原則に対する例外規定です。仮に出願前に公開した発明・考案・意匠についてこの規定の適用を受けたとしても、例えば、第三者が同じ発明・考案・意匠を独自に創作して先に出願していた場合や、先に公開していた場合には特許権・実用新案権・意匠権を受けることができません。このように、本制度はあくまでも例外規定であり、学会発表、展示会への出展、刊行物への掲載などで新規性を喪失する前に出願することが基本であることに変わりはありません。また、海外への出願を予定している場合には、各国の法制度の違いをよく確認することが重要です。

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