地域団体商標制度について~地域ブランドを保護し、地域経済の活性化を支援する制度~/弁理士 伊藤 孝太郎
- 商標(ブランド)
- 権利取得
- 戦略/活用
1.地域団体商標制度とは
近年、特色ある地域づくりの一環として、地域の特産品等を他の地域のものと差別化するための地域ブランド作りが全国的に盛んになっています。地域団体商標制度は、地域ブランドとして用いられることが多い、地域名と商品名(サービス名)からなる文字商標について、登録要件を緩和して、商標としての保護を認めようとする制度です。
現在、日本全国の628の地域ブランドが地域団体商標として商標登録されています。このうち、東海四県(岐阜県、静岡県、愛知県、三重県)では以下の地域ブランドが地域団体商標として商標登録されています(平成30年5月31日現在)。
ご覧のように、地域団体商標として登録されるのは、「地域の名称」と「商品(サービス)の名称」等の組み合わせからなる文字商標です。例えば、愛知県の「瀬戸焼」は、地域の名称である「瀬戸」と、商品である焼物を表す「焼」を組み合わせた文字商標となっており、普通の商標制度では登録をすることが難しい表示ですが、地域団体商標制度を利用することにより商標登録が認められたものです。
2.地域団体商標を登録するための4つのポイント
地域団体商標は、普通の商標制度では登録をすることが難しい「地域の名称」と「商品(サービス)の名称」等の組み合わせからなる文字商標について、登録要件を緩和して登録を認める制度です。従いまして、登録を認めるための一定の要件を定めています。具体的には、次の4つとなりますが、詳しくは専門家にご相談下さい。
(1)地域に根ざした団体の出願であること
例えば、農業協同組合、漁業協同組合、商工会、商工会議所、NPO法人などです。
(2)団体の構成員に使用させる商標であること。
例えば、組合であれば組合員に使用させる商標であることが必要となります。
(3)地域の名称と商品(サービス)に関連性があること
例えば、「地域の名称」が商品の生産地に該当する場合です。
(4)一定の地理的範囲において、ある程度有名であること
出願団体又はその構成員の使用により、一定の地域で、需要者(最終消費者又は取引事業者)に知られていることが客観的事実(販売数量、新聞報道など)によって証明できることが必要です。
3.地域団体商標を登録する3つのメリット
地域団体商標を登録することによりさまざまなメリットが期待できます。例えば、次のようなメリットが考えられます。
(1)他人への権利主張やライセンス契約
他人が無断で地域団体商標である名称を使用していた、又は使用する恐れがある場合、差止請求等の権利主張をすることができます。また、商標権は、他人に商標の使用を許諾(ライセンス)することができます。
(2)取引信用度等の増大
地域ブランドが商標権で保護されていることで、取引の際の信用力増加が期待できます。
(3)組織強化
商標をその団体で独占的に使用することにより、組合員の増加や、ブランドに対する自負の形成が期待できます。
4.農林水産物等の地理的表示(GI)保護制度との違い
地域団体商標制度に似た制度で、「農林水産物等の地理的表示(GI)保護制度」というものがあります。
これは、生産地と結び付いた特性を有する農林水産物等の名称を品質基準とともに登録し、地域の共有財産として保護する制度です。地域団体商標制度との主な違いは、保護対象が農林水産物や飲食料品等(酒類等を除く)に限られること、不正使用の取締りは国が行うこと、申請先は農林水産省であること等ですが、その他にも細かな相違点が幾つかあります。
地域団体商標と農林水産物等の地理的表示(GI)を重ねて活用することにより、地域ブランドを効果的に保護で きる場合がありますので、詳しくは専門家にご相談下さい。
5.地域団体商標の登録はゴールではなくスタート
地域団体商標を登録したら、それで「地域ブランド化」が完了したことにはなりません。地域ブランドが消費者に届くような戦略を立て、継続して情報を発信していくことにより、消費者に対する信用の蓄積を続けることが重要です。