企業における弁理士の役割/弁理士 田中 恵
- 時事
弁理士会の調査によれば、我が国の弁理士総数は12000名弱。そして、その1/4ほどが企業に勤務する企業弁理士です。
企業弁理士の主な仕事の1つに自社製品の特許化があります。社内での仕事は、まず、開発過程で得られた技術成果(発明)を言語化することに始まります。生まれたての発明は新しい知見を含んでいるうえ、技術者は当たり前のように“専門用語””独自の略語“など謎の言語を使うので、理解に骨の折れることもしばしばです。これらを読み解いて発明が言語化できると、ぼやっとしていた発明の輪郭が明らかになります。そうすると、先行技術調査を行うことができ、その結果を踏まえて特許性の判断を行います。
ただ、開発段階で得られる技術成果は「生もの」です。このため、技術者の開発魂が高じると、生まれた発明が「いつの間にか違う発明になっている事件」を生じさせます。結局のところ、発明が完成するまで何度も技術者と話をするのが何よりも重要な企業弁理士の仕事かもしれません。
昨年の春に企業の知的財産部を描いたドラマが放送され、企業弁理士の知名度も以前より向上したように思います。企業弁理士を目指す若い世代が増えていくことを願ってやみません。