戦略的な知財権取得に向けて/弁理士 布施 卓哉
- 戦略/活用
日本の特許出願に目を向けると、世界の趨勢に逆らって減少傾向が見られます。2000年以降、40万件程あった出願数が漸減中です。経済状況等の要因も無視できませんが、総R&D費が20兆円に伸びる勢いの中、出願数漸減の真因は他に内在しているかも知れません。
ここで、所有特許権の利用状況(自社での実施や他社への実施許諾)を見ると、業種で振れ幅がありますが、特許の利用率は、輸送機器で30%、電気機械で60%程度とのデータがあります。国内全業種で平均して、利用率は概ね50%に推移するようです。
R&D現場のヒアリングによれば、限られた予算で成果が出る都度、出せるだけ出願する等、機動的な戦術がとられるケースが見られます。その時点では、臨機応変と良く捉えることもできますが、長い目でみると未利用特許が増加し、特許価値・費用対効果がダウンします。それに引っ張られ、特許予算はR&D費の下位となったり、前年比何%削減など、知財投資がシュリンクしていきます。
その結果、場当たり的な戦術しかとれなくなる、という悪循環が発生していたように推察します。その状況で、大きな流れとして、2021年6月にはコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の改訂として、知財投資戦略の開示等が、明記されました。即ち、顧客や投資家にも知財戦略が重視され、ひいては企業価値(時価総額、株価等)と知財との相関が、より強くなるものと予想されます。自社の事業戦略に紐付くよう、如何にして戦略的に知財権を取得していくか、を早急に練る必要があるところ、知財専門家である弁理士に相談頂くのも有効な一手と考えます。