新聞掲載記事

2024年4月施行の不正競争防止法改正のポイント/弁護士・弁理士 北上 拓哉

  • 戦略/活用

 2023年6月7日に成立した「不正競争防止法等の一部を改正する法律」が、2024年4月1日に施行されました。改正のポイントは次の2点になります。
【改正のポイント】
 1.デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化
 2.国際的な事業展開に関する制度整備

 改正ポイントの1点目は、ブランド・デザイン等の保護強化に関する改正です。

 第1は、従来、不正競争として禁止されていた模倣行為の対象が有体物を前提とする規定でした。改正では、デジタル空間における取引が活発化する現代の取引の実情に合わせて、電子データ等の無体物を形態模倣商品としてインターネット上で提供する行為も不正競争の対象とする改正が行われました。
 第2は、従来から、営業秘密として保護されないビッグデータについて、安全な利活用・共有ができるよう、不正取得に対して差止めができるなどの限定提供データ制度が設けられていました。しかし、他者と共有するビッグデータのうち秘密管理されているものは限定提供データとして保護されていませんでした。改正では、他者と共有するビッグデータのうち秘密管理している場合を含めて限定提供データとして保護することとし保護範囲が拡大されました。
 第3は、従来は認められなかった被害者の生産能力を超えた分についても損害額と認めること、従来は物を譲渡する場合に限定されていた損害賠償額の算定規定の適用がデータや役務を提供する不正競争にも適用されるようになること、損害額としてライセンス使用料相当額を算定する場合に不正競争があったことを前提とした対価を考慮し増額請求することを可能とすること等、損害賠償額の算定規定の拡充がなされることになりました。また、侵害者が営業秘密を使用等したことを推定する規定を設けて、被害者側の立証の負担を軽減する改正もされており、不正競争による被害者の保護が強化されています。

 改正ポイントの2点目は、国際的な事業展開に関する制度整備に関する改正です。
 第1は、外国公務員贈賄に対する罰則について、法定刑を引き上げるとともに、処罰対象が日本企業の外国人従業員による海外での単独贈賄行為も含まれることになりました。
 第2は、国外において日本企業の営業秘密の侵害が発生した場合にも、日本の裁判所に訴訟を提起でき、日本の不正競争防止法が適用されることになりました。
 その他の改正としては、コロナ禍・デジタル化に対応した知的財産手続等に関して、インターネットを通じた送達制度を整備、書面手続のデジタル化等の整備がなされます。また、商標に関して、コンセント制度が導入される関係で、2つの類似の商標が併存し、一方の商標のみが周知性や著名性を獲得することによって、他方の商標が不正競争として差止請求の対象となるおそれがあるため、コンセント制度により登録された商標については、不正競争として扱わないとする適用除外の改正も行われました。
 事業者は、改正を踏まえて、どのように自社の商品デザインの保護を図っていくかについて、戦略的に検討することが必要となります。

ページトップへ