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税関水際取締り~知財侵害物品の輸入取締り~/国際知財委員会 弁理士 藤原 康高

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 税関は函館、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、門司、長崎、沖縄の全国9か所に設置され、水際取締りとして薬物や知的財産侵害物品(偽ブランド品等)、社会の安全安心を脅かす物品等の密輸出入を取り締まります。
 知的財産侵害物品の輸入差止実績は輸出差止実績に比べ圧倒的に多く、令和5年上半期の輸入差止点数実績は466,220点(前年同期比13.3%増)でした。
 これらを踏まえ、税関による知的財産侵害物品の輸入取締りを説明します。

1.差止申立制度
 税関長に対し、貨物の輸出入を差し止め、認定手続き(後述2.)を執るよう申し立てる制度です。
 税関は権限に基づき知的財産侵害物品の輸出入を禁止できますが、全ての知的財産侵害物品を把握するのは困難な為、権利者等が予め税関に対し侵害と認める物品を特定し、権利侵害と認める貨物に認定手続を取るよう申し立てる手続が輸出入差止申立です。差止申立てをするには、税関に対する手数料等は掛かりません。
 輸入差止申立てができる知的財産は①特許権、②実用新案権、③意匠権、④商標権、⑤著作権、⑥著作隣接権、⑦育成者権、⑧不正競争防止法第2条第1項第1号から第3号まで、第10号、第17号又は第18号の差止請求権に係るものです。
(1)要件
 ①権利者であるか(権利者、専用実施権/使用権者及び代理人)、②権利内容に根拠があるか(登録出願中は不可)、③侵害事実があるか(侵害物品が現に輸出入されている場合と、輸出入が見込まれる場合)、④侵害事実等を確認できるか(侵害物品、カタログ、写真等、対象貨物が侵害物品に該当すると思わせる資料)。
(2)必要な書類
 必要書類は①申立書、②登録原簿の謄本・公報、③侵害の事実を確認する為の資料等、④識別ポイントに係る資料、⑤通関解放金の額の算定資料、⑥代理人が手続きを行う場合の委任状です。必要な書類は権利ごとに異なる部分があります。

2.認定手続
 税関長が、侵害疑義物品の知的財産侵害物品への該否を判断する手続です。
(1)認定手続開始の通知
 税関は、輸入者及び権利者に対して認定手続を開始する旨を通知し、輸入者には権利者の、権利者には輸入者・仕出人の氏名又は名称及び住所を通知します。輸入者に対しては、本通知に係る貨物が輸入してはならない貨物に該当しないことを申し出る場合は、本通知を受けた日から10執務日以内に、その旨を書面で提出すべき旨を通知します。
(2)認定
 ①輸入差止申立てに係る貨物に限り簡素化手続きの対象です(輸出は対象外)。簡素化手続は、輸入差止め申立てが為されている場合に、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、育成者権、保護対象営業秘密に関する貨物について、輸入者から争う旨の申出が無い場合は、権利者及び輸入者に対して証拠・意見の提出を求めることなく、輸入差止申立書及びその添付資料により税関長が侵害の該否を認定することです。
 ②輸入差止め申立てされた貨物につき輸入者が争う旨を申し出た場合及び輸入差止め申立てが無い貨物については、輸入者及び権利者に対して証拠・意見の提出期限を通知し、税関は1カ月以内を目途に知的財産侵害物品に該当するか否かを認定し、認定結果を理由と共に輸入者及び権利者に通知します。

3.認定結果
 非該当認定の場合、輸入許可となります。該当認定の場合は同貨物は輸入できず、認定結果に不服が無い場合は自発的処理として廃棄、滅却、積戻し、権利者からの輸入許諾、侵害部分の切除などの修正や任意放棄を行うことができます。
 また、認定結果に不服がある場合は、行政不服審査法、行政事件訴訟法に基づき争えます。
 認定通知後不服申立てができる期間3カ月を超えて、輸入者による自発的処理がなされない場合、税関は当該貨物を没収処分します。

出典:税関ホームページ 

 


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