日本初の女性弁理士/弁理士 山下 美和
- 時事
NHK連続テレビ小説「虎に翼」のヒロイン・猪爪寅子のモデルは、日本初の女性弁護士、三淵嘉子(みぶちよしこ)さんでした。女性弁護士の第1号が誕生したのは1940年(昭和15年)でした。では、女性弁理士の第1号が誕生したのは何年だったでしょう。驚いたことに、それは1935年(昭和10年)でした。また、女性弁理士の第2号も、女性弁護士の第1号より早い1938年(昭和13年)に誕生しています。女性弁理士の第1号は井上清子(いのうえせいこ)さん。井上清子さんは、男装で執務をされていたそうです。「虎に翼」では、猪爪寅子の大学女子部からの同期・山田よねも男装の女性でした。
それから女性弁理士の人数は少しずつ増え、2024年5月31日の時点で2,049人に上ります。けれども女性弁理士の人数は、男性弁理士の人数(9,808人)と比べて少なく、弁理士全体での比率は約17%にとどまります。女性弁理士が少ない理由の一つに、アンコンシャス・バイアス(性別による無意識の思い込み)による影響がありそうです。弁理士業務には理科系の知識が求められることが多いため、理科系出身者が弁理士の大部分を占めます。弁理士の最終学歴(文理)の内訳は、2024年5月31日の時点で文科系2179人(18.4%)、理科系9182人(77.4%)、その他496人(4.2%)です。理科系学部の女子学生の割合は男子学生に比べて少ないため、女性弁理士も少ないと思われます。「女子は理科系が苦手」というアンコンシャス・バイアスから、女子学生は文科系を選択しがちなのかもしれません。アンコンシャス・バイアスは女子学生の進路だけでなく、仕事にも影響を与えます。「虎に翼」では、弁護士になったヒロインが、女性ゆえに仕事の依頼をもらえない様子が描かれました。女性弁理士もきっと同様の経験をしたでしょう。現在でも、担当は男性弁理士にしてほしい、というクライアントの話を聞いたことがあります。世界各国の男女平等の度合いを数値化した「ジェンダーギャップ指数」2024年版報告書によれば、男女が完全に平等な状態を100%とした場合の日本の達成率は66.3%で先進7カ国(G7)では最下位です。とはいえ、日本の「ジェンダーギャップ指数」は前年の64.7%から1.6ポイント改善しました。また、国別のランキングも前年の125位から118位になりました。雨垂れ石を穿つ。この先も少しずつ社会は変わるでしょう。まさに「虎に翼」で時代とともに力を得る女性弁理士(虎)の活躍にご期待ください。