日本弁理士会東海会会長 奥田 誠 氏に聞く
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日本弁理士会の東海支部は4月、名称を「東海会」に変更し、2019年度会長に奥田誠氏(60)が就任した。同会は愛知、岐阜、三重、静岡、長野の5県を管轄し、880人の弁理士を会員とする。日本特殊陶業株式会社でセラミック関連の技術畑と知的財産部を経験し、企業における知的財産の重要性を肌で感じた奥田氏に、弁理士制度創設120周年にあたる本年度の活動方針を聞いた。
―就任の抱負から。
全国九つの「支部」が本年度から「会」に名称変更した。今まで以上に地域に対して責任を持つという意味合いが変更の狙いと考えている。責任感を胸に地域に役立つ活動を展開していきたい。一般市民向け、教育機関向け、中小企業向けが当会の事業の三本柱。それぞれしっかりと取り組んでいくが、本年度は特に中小企業向けを強化する。知的財産の重要性を啓蒙していく
―中小企業向けを強化する理由は。
特許、意匠、商標など知的財産取得への意識が低いからだ。製造業なのに一度も出願経験がない企業も少なくない。中小企業の中には系列に依存してきた会社もあるが、この先、それでは生き残れない。自社製品を国内外で展開し自立化を図ることが課題であり、そうした経営を進める上で知的財産の理解が必要となる。サービス業であっても、商標の取得や活用は重要な戦略だ
―具体的にどう取り組む。
啓蒙の一環として毎年度、セミナーや、「知財経営サロン」を展開している。サロンは中小の経営者5、6人と弁理士数人が座談会形式で知的財産に関する意見交換を行い、気づきを得る会である。当会の会議室で年間6~8回開催してきたが、前年度は各地に出向いて行う出張型サロンを試行した。多くの中小企業に体験して欲しいと考えており、本年度はさらに出張型サロンを強化する計画だ
知財金融にも力を入れる。金融機関の行員向けに知財教育を行うとともに、金融機関と取引する中小企業への啓蒙を図る。事業強化に向けて、知財金融担当委員会を新設した。知的財産が事業性融資の判断材料になっていることやM&A(買収・合併)の際の価値評価になることを伝え、中小企業の背中を押していく。昨年度に続いて本年度も「しんきんビジネスマッチング」に出展する。出展、来場する中小企業に弁理士や知財をアピールする
―一般市民、教育機関向けではどんな事業を展開する。
一般市民向けは例年、名古屋や岐阜、三重、静岡、長野の各県で休日パテントセミナーや週末パテントセミナーを実施しているが、本年度も各地で開催する。また、7月13日には、ららぽーと名古屋で弁理士の日記念イベントとして親子向けに科学工作などを行い、弁理士や知的財産の周知を図る。教育機関向けでは、当会は他の地域会に先駆けて、小中高大の学生を対象に知財教育を実施している。名古屋市立大学では教養教育課程で講義を継続しており、本年度で10年目を迎える
―7月に弁理士制度120周年を迎える。
日本弁理士会は7月1日に東京で記念式典を開催する。東海会も各県で記念イベントを実施する予定だ
―最後に、目標は。
中小企業に知的財産の重要性を浸透させるのが本年度の最大の目標だ。この先どんな時代になろうと、知的財産が必要とされないことはない。日本経済を支えるのは中小企業。知的財産権を保護、活用して競争力を高められるよう、しっかりと支援していきたい