特許異議申立制度について/弁理士 岩田 誠
新聞掲載記事- 特許(発明)
特許異議申立制度は、特許付与後の一定期間に限り、広く第三者にその取消しを求める機会を与え、特許異議の申立てがあったときは、特許庁が自ら特許処分の適否を審理し、瑕疵がある場合にはその是正を図ることにより、特許に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために導入されたものである。
特許異議申立制度は、平成15年の法改正により廃止され特許無効審判制度に包摂されるに至っていた。しかしながら、特許無効審判の当事者の手続負担が大きいこと、強く安定した特許権を早期に確保することの重要性が高まっていること、などの観点から、平成26年度特許法の一部改正により復活し、平成27年4月1日より施行されている。
特許異議の申立ては、何人もすることができる。自然人であるか法人であるかは問われない(なお、特許異議申立制度の導入により、特許無効審判については「利害関係人」のみが請求人適格を有する、と改正された。)。
特許異議の申立ては、特許掲載公報の発行の日から6月以内に限り行うことができる。二以上の請求項に係る特許については、請求項ごとに申立てを行うことができる。特許異議の申立ての理由は、特許法第113条各号に規定するものに限られる。
すなわち、1号:新規事項の追加違反(同法17条の2第3項)、2号:外国人の権利享有違反(25条)、特許要件違反(29条、29条の2)、不特許事由違反(32条)、先願違反(39条1項~4項)、3号:条約違反、4号:記載要件違反(36条4項1号又は6項(4号を除く))、5号:外国語書面からみた新規事項の追加違反、である。
特許異議の申立て審理は、書面審理による。口頭審理が行われることはない。審理は3人又は5人の審判官の合議体により行われる。審理においては、特許権者や特許異議申立人等が申し立てない理由についても、職権によって審理することができるとされている。特許の取消決定に対しては、特許権者等は東京高等裁判所に出訴することができる。
一方、特許の維持決定に対しては、不服を申し立てることができない。取消決定が確定したときは、との特許権は初めから存在しなかったものとみなされる。維持決定が確定したときは、その特許権の効力は維持される。