統計でみる中小企業の特許~支援事業や助成金の利用~
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今年も特許庁から「特許行政年次報告書2018年版」が公表されました。中小企業における知的財産活動の状況はどうでしょうか。特許出願件数などを見てみましょう。
2017年の中小企業における特許出願件数は約4万件(前年比0.6%増)です(図1)。特許出願全体の約15%に相当します。増加傾向ではあるものの、中小企業の数(全企業数の99.7%以上)からすれば、特許の取得及び活用に積極的な企業は未だ少数に留まると見ることもできます。特許を取得する上で最大のネックは費用ではないでしょうか。特許の取得までには、出願費用(書類作成料、特許印紙代)、審査請求料及び特許料などが必要です。審査請求料と特許料については、一定の条件を満たせば軽減を受けられます。中小企業を対象とした軽減措置の詳細は特許庁のウェブサイトで確認することができます。
一方、中小企業の海外展開の状況に目を向けると、中小企業における海外への特許出願件数は約6千件(2016年)であり(図2)、前年比で7.7%の増加です。中小企業の海外進出が進んでいることと、海外進出の際に特許取得が重要であることの表れといえるでしょう。
海外進出にあたっては権利侵害や模倣被害への対策が重要です。また、知らずに他社の権利を侵害し、慣れない海外での訴訟に巻き込まれるケースも想定されます。自社の権利のみならず、他社の権利への配慮も大切です。とはいえ、多くの中小企業では費用や手続の面などから、十分な対策を取れずにいるのが現状ではないでしょうか。そこで活用したいのが、特許庁等が提供する中小企業向けの支援事業です。例えば、海外進出や海外事業展開に関する相談には、(独)工業所有権情報・研修館(INPIT)海外展開知財支援窓口を利用できます。また、海外での特許取得にかかる費用については、特許庁による中小企業等外国支援事業として、中小企業知的財産活動支援事業費補助金が用意されており、一定の条件を満たせば、特許出願にかかる費用の半額の助成を受けることができます。海外進出する際には是非利用したいものです。
国内及び海外での事業展開を有利に進めるため、また、トラブルの未然防止のためにも、知財を活用することが望まれます。海外での特許取得は手続が煩雑で費用もかかりますが、上記の支援事業や助成金等を積極的に利用するとよいでしょう。
弁理士 萩野 幹治