第4次産業革命に関係する著作権法の改正
新聞掲載記事- 著作権
- 時事
IoT・ビッグデータ・人工知能等の技術革新による「第4次産業革命」は我が国の生産性向上の鍵と位置づけられ、これらの技術を活用し著作物を含む大量の情報の集積・組合せ・解析により付加価値を生み出すイノベーションの創出が期待されている。
著作権の保護対象は、一般的には絵画、小説などとなるが、データベース等の情報、プログラムも含まれるので(著作権法10条等)、第4次産業革命とも密接に関係する。
著作権法は、公共的な文化的所産の側面のある著作権について、第三者が著作権者の許諾無く利用できる権利制限の規定を利用の目的や場面ごとに具体的に規定している。その中には、最近になって、デジタル著作物に関してその活用を容易にする改正がされたが、それも個別的規定に委ねられている。
このため、技術革新に伴う新たな著作物のニーズとして、例えば「AI(人工知能)による深層学習」、「情報解析サービス」等への対応が困難との指摘がある。
従って、環境変化に対応した著作物利用の円滑化を図り、技術革新を促進するため、著作権者の許諾無く利用できるための柔軟な権利制限規定が求められる。
著作権の制限の考え方は、著作権者の利益を不当に制限しないことに配慮しつつ、大きく二つに分類でき、米国では、フェアユース(Fair Use)という包括的規定で、時代の変化に対応し易いが、権利の制限内容がやや不明確となり得る。
一方、日本では、著作権の制限を個別的規定することにより、制限内容を明確にしているが、時代の変化にやや対応しにくくなっている。
法改正は、法体系を維持しながら具体的に制限内容を列挙するが、次に示すように制限規定の内容そのものに柔軟性を持たせた規定が新設された。
「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用(新30条の4)。」即ち、著作物は、下記①~③に掲げる場合その他の当該著作物に表現した思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる、と規定された。
① 著作物利用に係る技術開発・実用化の試験
② 情報解析
③ ①②のほか、人の知覚による認識を伴わない利用
今後も技術革新を推進するのに当たり、著作権法等の速やかな法整備が望まれる。
改正法は平成30年5月18日に成立し、一部の規定を除き、平成31年1月1日に施行される。なお、紙面の制限により法改正の一部のみ説明していることに留意下さい。
弁理士 神戸 真澄