模倣品の水際取締り強化について~商標法、意匠法が改正されました~/国際知財委員会 弁理士 牧内 和美
新聞掲載記事- 意匠(デザイン)
- 商標(ブランド)
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御社の商品デザイン、パッケージデザイン、ブランド名を模倣した商品がインターネットのショッピングサイトで出回っているのを見聞きしたがどうしたらよいかわからない、或いは、そのような商品が出回ったらどうしようと不安に感じられていることはないでしょうか。
コピー商品、フェイク品とも呼ばれる模倣品対策として、水際取締りがあります。麻薬等不正薬物等と並んで、知的財産権の侵害品の輸出入も日本各地の税関つまり水際での取締りが行われています。水際取締りを強化する商標法と意匠法の法改正が令和4年10月1日から施行されましたので、ご紹介したいと思います。
法改正に至った背景をご説明します。近年、インターネットを使用した電子商取引の発展等を背景に、海外の事業者が、国内の個人消費者に対し、小口の模倣品を郵便等で直接販売し、送付する事例が急増しています。
税関において、商標権、意匠権等の知的財産権を侵害する物品は、関税法に基づく没収等の対象とされています。ところが、法改正前の商標法、意匠法の下では、「個人使用」目的で模倣品を輸入する行為には商標権及び意匠権の侵害が成立しないことから、こうした「個人使用」目的の輸入に係る物品は、関税法に基づいて没収等することができませんでした。
さらに、税関における没収の前提として、知的財産権の侵害物品に該当するか否かを認定するための手続(「認定手続」)を執ることとされています。しかし、当該手続において輸入者が「個人使用目的」を主張した場合、個人使用目的でないことを立証することは非常に困難で、個人使用目的でないとは認められず、その結果知的財産権の侵害物品として没収等することができない事案が多発していました。
因みに、ある弁理士から聞いた話によると、模倣品のスマートフォンのケース計30個が税関で発見されましたが、「個人使用目的」であると輸入者が主張したケースもあったそうです。スマートフォンのケース30個を個人で使用すると主張するのは流石に無理があり、個人使用とは認められなかったようです。
このように、近年、個人使用目的の模倣品の輸入が急増しており、海外から国内への模倣品の流入増加に歯止めをかけることができていませんでした。更に、コロナ禍において生活様式が変化した結果、電子商取引の利用が一層加速しています。
このような背景を受けて、商標法と意匠法とが令和3年5月に改正され、令和4年10月に施行されました。
改正法においては、「海外の事業者が模倣品を郵送等により日本国内に持ち込む行為」が権利侵害行為となることが明確化されました。これにより、輸入者が個人であっても、外国から日本に輸出する者が事業者である場合、権利侵害に該当し、罰則及び税関での輸入差止の対象となります。
取締り強化のための法改正についてご説明しましたが、実際に税関で輸入を差し止めるためにはどうしたらよいでしょうか。まずは、商品デザイン、パッケージデザイン、ブランド名について商標登録や意匠登録を受けることが重要です。技術的に特徴があるという商品については特許を取得することも考えられますが、税関での輸入差止に関しては、税関の職員が外観から即座に判断し易い商標や意匠の方が迅速な対応が可能であると言われています。
商標権等が得られると、権利者として税関に対して輸入差止申立てを行うことができます。申立てが受理され、税関で疑わしい商品が発見されると、認定手続きが開始されます。認定手続きでは、権利者と輸入者双方から意見や証拠の提出を受け、それらに基づいて侵害品であるのか否かの判断がなされます。権利者の主張が認められ、侵害品であると認定されると、その侵害品の輸入が差し止められます。
更に、国内だけでなく、海外、特に模倣品の製造国の税関に対して差止申立てをすることも有効です。この場合、当該製造国においても商標権や意匠権を取得することが必要です。
われわれ弁理士は、商標登録出願、意匠登録出願など、国内外の権利の取得時はもちろんのこと、税関での手続きに関しても知的財産の専門家としてご協力が可能です。ぜひお気軽にご相談下さい。