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オリンピックと知的財産権~その用語やロゴは使って大丈夫??~/弁理士 伊藤 孝太郎

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 7月26日から8月11日まで、第33回オリンピック競技大会がフランス・パリを中心に開催されます。パリでオリンピックが開催されるのは1900年、1924年に続き3回目となります。また、1924年以来100年ぶりのパリでの開催でもあります。
 本大会では、32競技329種目が実施される予定です。日本からも多くの選手が参加予定であり、メダルの獲得が大いに期待されます。そして、日本代表の選手がメダルを獲得した際には、祝勝セール等を行って盛り上がりたいところです。
 ところで、オリンピックで使用されている用語、ロゴ、キャラクターデザイン等は、商標法、不正競争防止法、著作権法等の知的財産権法で保護されています。まずは、オリンピックに関連した用語、ロゴ等について、商標登録されている代表的なものをご紹介します。なお、後述する以外にもIOC(コミテ アンテルナショナル オリンピック(世界オリンピック委員会))やJOC(公益財団法人日本オリンピック委員会)等のオリンピック関係団体により商標登録されている用語やロゴデザインは多数あります。

(一)「OLYMPIC」又は「オリンピック」の語は、IOCにより、第28類(運動用具関連)、第35類(広告関連)、第41類(スポーツイベント関連)等について商標登録されています。
(二)オリンピック・シンボル(単色または5色からなる、同じ大きさの結び合う5つの輪)のロゴも、IOCにより、第35類(広告関連)、第38類(テレビ放送関連)、第41類(スポーツイベント関連)等について商標登録されています。
(三)「がんばれ!ニッポン!」の語は、JOCにより、第1類から第45類までのほとんどの商品・役務の分類について商標登録されています。
(四)2021年に開催された東京オリンピックの公式マスコットの「ミライトワ」のキャラクターデザインは、IOCにより、11の商品・役務の分類について商標登録されています。また、競技会場等で使用された各種競技を表す49種類のピクトグラムも、IOCにより、第35類(広告、小売り関連)、第41類(スポーツイベント関連)について、49種類それぞれが商標登録されています。


 従いまして、これらの用語やロゴデザイン等を、商標登録されている商品・役務について使用することは商標権侵害となりますので注意が必要です。一方、登録されていない商標を使用する場合や、登録されている商標であってもその指定商品・役務と非類似の商品・役務に使用する場合は、商標権侵害に該当しないと考えることができます。しかしながら、オリンピック関連の用語やロゴは、テレビ中継や各種報道により短期間で有名になります。その場合、商標登録されていなくても、不正競争防止法の対象となる場合があります。例えば、ある用語やロゴが、オリンピック関連団体の用語やロゴとして需要者の間に広く認識されている場合に、それらと類似する表示を使用し、オリンピック関連団体の商品や営業と混同を生じさせる場合には、同法が定める不正競争に該当するとされ、差止請求や損害賠償請求の対象となる場合があります。
 ところで、今回のパリオリンピックで使用される予定のロゴやキャラクターデザインは商標登録されているのでしょうか?パリオリンピックでは、金メダル、オリンピック聖火、およびフランス革命と国民の象徴であるマリアンヌの顔の3つの象徴的なシンボルを融合した大会エンブレムが採用されています。また、公式マスコット・キャラクターには、フランス革命を象徴し、自由を表すフリジア帽をモチーフとした「フリージュ」というキャラクターが採用されています。更に、各種競技を表すピクトグラムは、東京オリンピックのものとは異なる新しいデザインのものが使用されるようです。


 本稿執筆の時点では、これらのロゴやキャラクターデザインが日本の特許庁に商標出願されている記録は見当たりませんでした。商標出願していない理由は不明ですが、安易にこれらを使用することは避けた方がよいでしょう。もしかしたら、既に商標出願されているかもしれません。特許庁のデータベースに反映されるまでに、通常、1カ月くらいかかるためです。また、パリオリンピックが始まればこれらのロゴやキャラクターデザインは日本でもいっきに有名になりますので、先に述べた不正競争防止法に該当する可能性もあります。更に、キャラクターデザイン等は著作権でも保護が可能と考えられているのかもしれません。
 ここまでお読みになられますと、オリンピックで日本代表選手がメダルを獲得しても、祝勝セール等に使用できる用語等はほとんどないのではと思われるかもしれません。実際のところ、JOCのホームページに掲載されている「オリンピック等の知的財産の使用に関するガイドライン」には、オリンピックに関連する知的財産を利用した広告宣伝・販売促進等について、かなり厳しい制限がされており、オリンピックパートナー(スポンサー企業)以外の企業は使用できないと記載されており、使用のための所定の申請も受け付けていないように見受けられます(https://www.joc.or.jp/about/brand_protection/pdf/guidelines2023_06.pdf)。
 しかしながら、商標登録されていない名称や、オリンピックを連想させない名称等であれば使用できる可能性はあります。例えば、「金メダル」の語は、一般企業が一部の商品分野について商標登録していますが、IOC等のオリンピック関連団体は商標登録していません。当該一般企業が商標登録している商品分野と異なる商品・役務の分野であれば使用できる可能性があると思われます。但し、どのような名称で、どのような商品・役務の分野であれば使用ができるかは、個別に検討をする必要があります。詳しくは専門家にご相談下さい。

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