知的財産セミナー2019~事業を成功へと導くための知財戦略~
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平成31年1月31日に、日本弁理士会東海支部開設日記念「知的財産セミナー2019~事業を成功へと導くための知財戦略~」を開催しました。日本弁理士会の東海支部が設置されたことを記念して、日本弁理士会東海支部は毎年この時期に知的財産セミナーを開催しています。
基調講演は「デザイン経営を支える意匠制度の未来」と題して、特許庁 審査第一部長の澤井智毅様にご講演を賜りました。
研究開発(イノベーション)を社会に実装する上で知財の重要性が増していること、特に製品の同質化が急速に進む今日においては、機能や品質のみでの差別化が困難な時代であり、デザイン開発と意匠制度の利用を経営上の重要な要素と位置付ける必要があること等を、実際の著名企業の意匠出願傾向のデータを踏まえてご紹介頂きました。デザイン経営によりブランド力とイノベーション力を高めて、企業競争力の向上を図るための方策や実例を聞くことができた大変貴重な講演でした。
第1部は「親水性無機塗料『ゼロ・クリア』の販売戦略を支えた知的財産」と題して、株式会社五合代表取締役の小川宏二様にご講演賜りました。
同社の親水性無機塗料である「ゼロ・クリア」について、技術(特にノウハウ)とブランドを武器に、世界の成長市場への選択と集中を戦略的に行うことで、今日では、中小企業でありながらファブレス型のビジネスモデルにより、多くの国での市場開拓に成功していること等を紹介頂きました。中小企業が、知的財産権を武器に世界で成功を収めるまでの生の実例を聞くことができた講演でした。
第2部は「伝統技術とデザインの融合・企業発展に寄与した知的財産」と題して長谷川刃物株式会社代表取締役社長の長谷川尚彦様からご講演賜りました。
知的財産権に関し、「刃物」のような伝統的な商品は、革新的な技術が出にくく、デザインの独自性やブランド力が重要であり、特許よりも意匠・商標に重きをおいて種々のデザインや商品名等を保護してきた点を、実例を踏まえながら紹介頂きました。次々に斬新な新デザイン等を開発・展開する事業戦略は、多くの企業にとって大変参考になるものだと感じました。
第3部は「「あずきバー」の逆襲-地方菓子メーカーの知財戦略-」と題して、井村屋株式会社開発部副部長 兼 同デザイン・マーケティングチーム長の松崎秀央様からご講演賜りました。
「あずきバー」は、現在、商標登録を受けているが、過去には登録できておらず、多数の企業による類似品も多く販売されている実情がありました。これに対して、企業努力により、各種イベント開催、TVCM等の活動を積極的に行うことで、識別力を獲得したとして現在では標準文字としても商標登録を受けている点等のご紹介を頂きました。同社のブランド(商標)を武器にビジネスチャンスを確実にものにする積極姿勢等については、ブランド戦略をはかる上で大変参考になるものだと感じました。
第4部は第1部~第3部までの講師がパネリストを担当し、モデレーターを交えて「ブランドの確立とデザイン力なくして企業の販売戦略は成り立たない」と題したパネルディスカッションを行って頂きました。各企業においてブランド戦略を展開するにあたり留意している点や、現場もある程度の知財知識を持つことが重要であること等、知的財産権に関して各企業における具体的な成功例、要望、問題点を伺うことができた大変貴重なパネルディスカッションでした。
本セミナーは、意匠や商標を主に用いて事業を成功へと導くための知財戦略を知ることができる大変有意義なセミナーでした。
知的財産権制度推進委員会 弁理士 間瀬 武志