中小企業の知財管理~中小企業における技術力の向上に~
新聞掲載記事- 特許(発明)
- 戦略/活用
1.はじめに
企業発展の要因は、資本力、営業力、技術力を充実させることにある。中でも中小企業にとって技術力を充実させることは、資本力や営業力に比べて気軽に行えることである。すなわち、我が国においては知財、特に特許制度を活用することにより、社内の技術力を高め、短期に企業を発展に導くことは可能であり、その成功例は数え切れない程ある。
2.企業発展の為の文献公開制度について
我が国特許庁では、毎年約31万件の発明に関する出願を受け付け、これらを活用し易いように分野別に分類し、最新の技術文献として公開している。
これら文献は、技術者が活用し易いように統一した書式で記載されており、「従来品の問題点」「問題点の解決手段」「その手段による作用効果」等が、分かり易く記載されている(図参照)。
このような制度に対し大企業の技術者は、これらの技術文献利用に習熟しており、宝の山である前記文献を活用して最新の商品開発知識を獲得すると共に、優れた新商品を次々と市場に送り出し、これにより大企業は大きな利益を生み出している。
ところが、中小企業における従業者の多くは、日常業務に追われ、折角の前記お宝文献に対面する機会は少ない。
従って、従業者の商品開発知識は古いままの場合が多く、開発された商品も時代遅れになり、商品の利益率も低くなる場合が多い。
3.従業者の実務教育
このような観点からすれば、中小企業における従業者の教育、特に商品開発に関係する従業者の技術力の向上を図る為の教育は急務といえる。
この場合の選択肢として、国が用意してくれている前記「文献公開制度」を活用して新技術力の向上を図る教育を行えば、あまり費用を掛けずに効率よく目的が達成出来る。
具体的な方策としては、例えば従業者が具体的な開発工程に入る前に、必ず前記お宝文献を検索精査するシステムを作る。それにより、関係分野における最新技術の動向を察知させ、合わせて先駆者の開発手法、需要者の動向等々最新の情報をも入手させるなどして、二重研究による無駄な時間を節減させたり、資材の浪費を回避させたりして開発コストを低下させる。
また従業者は、入手した最新情報から開発や問題点解決のヒントを得ることができ、都度都度の検索によって、関係分野の新技術をマスターすることになり、従業者の新技術力の向上は図れる。
4.むすび
前記従業者の実務教育の成功により、次々とヒット新商品が生み出されるようになった場合には、それらについて、特許制度の排他的独占実施権を獲得し、ヒット新商品における高利潤を永く維持し、企業の発展に貢献させればよい。
弁理士 中島 知子