青白い頼りない微かな光が
新聞掲載記事- 特許(発明)
- 権利取得
- 契約/紛争
あれは30数年前のことであったろうか。小さな石の放つ青白い、頼りない、微かな、点のような光を見た。名大から世界に向けて放たれた青色LED世界初の、30年後にノーベル賞に輝いた光である。
受賞理由が挙げた基本発明は4点ある。頼りない光は第1の基本発明だけで実現された新石器への過渡期のLEDである。将来のノーベル賞は光の弱々しさ故に予測できなかった。頼りない光から5年の間に疾風のように革新が起こり、受賞理由の基本発明と特許は成立した。特許の寿命は出願から20年、その間の技術革新に堪え、侵害訴訟や審決取消訴訟に堪え得るように発明の本質が厳格に把握されて明細書が作成されているかが重要となる。
途中6年に渡る訴額160億円の大規模訴訟が起こった。侵害訴訟13件、審決取消訴訟20件。裁判所から世紀の和解とまで言われた劇的な和解による取下げで終了した。確定判決はなく権利は寿命を終えた。異議審判だけは勝訴後特許庁の審理に戻るが生き残った。訴訟での発明に関する主張は、将来のノーベル賞受賞を妨げない様に気を使った。
審決取消訴訟は判決言渡時の裁判長の最初の一語で勝敗が分かる。全神経を注いで口元を見る。「と」であれば勝訴、「げ」であれば敗訴。原告勝訴の瞬間、被告席の著名弁護士の表情が険しく豹変するのを見た。和解勧告の要因となった特許の復活の瞬間である。
弁理士 藤谷 修