日本弁理士会東海会会長 田中 敏博 氏に聞く
- 弁理士会
日本弁理士会東海会の2021年度会長に、田中敏博氏(アイテック国際特許事務所代表弁理士)が就任した。同東海会は愛知・岐阜・三重・静岡・長野の5県下で活動する弁理士で構成。中小企業・一般市民・教育機関向けの3本柱で支援事業を展開している。「知財(知的財産)のエキスパートとして、知財を通して中小企業と地域の発展に貢献していきたい」と話す田中会長に、本年度の取り組みを聞いた。
-就任の抱負は。
会の活動としては対外的・対内的の二つがあるが、ウエートは外に向けての活動にあり、中でも中小企業支援に重点を置いている。大企業は社内に知財の専門家がいるが、中小企業ではそうはいかない。優れた技術やノウハウを持っていても、それに気づかない中小企業も多い。そうした中小企業に「知財に対する気づき」を促すことが、われわれの会の仕事であり、まずは中小企業への支援を念頭に事業を展開していく。
-中小企業支援の具体的な内容は。
東海会独自の支援ツールに「知財経営サロン」がある。弁理士と中小企業の経営者らそれぞれ数人ずつのグループで、知財についてざっくばらんに話し合う会で10年近くの歴史がある。また金融機関との連携も進めており、愛知県と名古屋市の信用保証協会、さらに長野県信用組合とも連携協定を締結し、金融機関とその顧客である中小企業に向け、さまざまな機会を捉えて知財に関する支援を行っている。
-今年度の新規事業は。
自社の知財診断を希望する中小企業を東海会の会員が訪問して、知財のネタや何を保護すべきかを診断する「簡易キャラバン(仮称)」を新たに実施する。実は同様の「弁理士知財キャラバン」はこれまでも実施しているが、回数が3回と企業側の負担が大きいため、今回は1回だけの訪問で事業全体を俯瞰(ふかん)できるよう運営も工夫する。知財経営サロンや金融機関との連携で関わりのある中小企業を中心に、今年度は6社程度で実施する計画だが、好評であれば次年度から規模を拡大することも検討する。
-一般市民・教育機関向けの事業は。
一般向けでは、7月1日の弁理士の日を記念したフェスタ、各地で開催する休日・祝日パテントセミナー、中部経済産業局主催のサイエンスショーへの参画、1月31日の東海会開設日を記念したセミナーなどを計画している。また教育機関向けでは、小学校から大学までの知財教育を支援するため、講師の派遣や授業内容の提案などを行う。この事業で名古屋市立大学とは10年の歴史がある。
-コロナ禍の事業への影響は。
コロナ禍で前年度は一部の事業が中止となったり、オンラインでの開催となったりしたが、1年を通してみれば、知財活動を前向きに進めることができたと思う。今年度も感染の状況を見ながら、リアル開催か、ウェブ開催か、あるいは中止するかを判断することになるだろうが、東海会の目的はあくまでも社会貢献であり、その観点から事業を前向きに進められるよう努めていきたい。