音楽教室での楽曲演奏は、演奏権を侵害するのか?/弁理士 小池 浩雄
新聞掲載記事- 著作権
日本音楽著作権協会;JASRACは、国内の作詞者,作曲者,音楽出版社等の著作権等権利者から権利の管理委託を受けて、管理楽曲が使用された際に著作権料の徴収を行い、権利者に分配を行う団体です。このJASRACが昨年、今まで未徴収であった音楽教室での楽曲演奏に対し著作権料を徴収する方針を固め、音楽教室事業者に書面で通知を行い意見を求めました。
これに対して、事業者の約340社が「音楽教室を守る会(以下、守る会)」を結成し、「音楽教室における著作物の利用に著作権法第22条に規定する演奏権は及ばず、JASRACには使用料の徴収権限がない」旨を回答したところ、JASRACは「(前記回答は)見解を述べているに過ぎない」と判断し、本年6月7日文化庁に使用料規定を提出しました。一方「守る会」は、同6月20日に「JASRACには使用料の徴収権限がない」ことを確認するため「請求権不存在確認訴訟」を東京地方裁判所に提起しています。
著作権法第22条(演奏権)は「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(公に)上演し、又は演奏する権利を専有する」と規定しています。また、法上演奏権が及ばない条件は、(1)営利を目的としない,(2)聴衆,観衆から料金を徴収しない,(3)出演者等に報酬が支払われない,になります。
JASRACの主張は「楽器教室で演奏する主体は(法上の観点から)当該楽器教室の経営者」,「音楽著作物の利用は不特定の顧客(受講者)に対するもので公の演奏にあたる」,「ダンス教室での音楽著作物の演奏利用は公衆(不特定かつ多数)に対するものとの判断が既に示されている(名古屋高判平16・3・4)等です(JASRACHP;「楽器教室における演奏等の管理開始について」より)。
一方「守る会」の主張は「授業の課程で行われる演奏は『公衆』に対する演奏ではなく、『聞かせることを目的』とした演奏でもない」等です。また法第1条は「この法律は、著作物並びに~これに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」と規定しており、「教育のための著作物の利用は『文化的所産の公正な利用』に含まれ、音楽教育は『文化の発展に寄与する』という法目的を実現するもので、これに反する第22条の解釈は許されない」(「守る会」HP;「訴状の概要」より)とも主張しています。
皆さんはどちらの主張に理があると考えますか?裁判所の判断が注目されます。