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新しい紙幣と知的財産/弁理士 齋藤 俊平

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 昨年(2024年)7月3日、一万円札、五千円札、千円札が20年ぶりに改刷されました。少しずつではありますが慣れてきたのではないでしょうか。新しい紙幣は、より偽造しにくいように新しい偽造防止技術が採用されるとともに、誰にでも使いやすいように様々な工夫が施されています。

■偽造対策
 新しい紙幣では、一万円札と五千円札には「ストライプ型」、千円札には「パッチ型」のホログラムが採用されています。今回注目なのが、最新の偽造防止技術として、Metallic View(メタリックビュー)(登録商標:第4714404号)と称される「3Dホログラム」が採用されていることです。今回採用された「3Dホログラム」は、ホログラム中の肖像が紙幣を傾けると回転し、まるで顔の向きが変わっているように見えます。国立印刷局によれば「3Dホログラム」の紙幣への適用は世界初とのことです。また、国立印刷局のホームページには「3Dホログラム」に関連する特許技術「特許第4604209号 真偽判別可能な情報担持体」がライセンス技術として紹介されています(https://www.npb.go.jp/product_service/tech/license.html)。ご興味のある方は見てみてはいかがでしょうか。個人的には、特許の権利範囲が紙幣に限定されていないことやライセンスが可能とされていることに興味を抱きました。

■ユニバーサルデザイン
 新しい紙幣では、肖像が変更されましたが、それだけではなく、誰にとっても使いやすくなるように、アラビア数字による額面表示の大型化や識別マーク、ホログラム、すき入れの位置が券種ごとに変更されるなどの様々な工夫が施されています。そして、国立印刷局では各券種について意匠登録しています(一万円札:意匠登録第1657689号、五千円札:意匠登録第1657690号、千円札:意匠登録第1657691号)。これら意匠登録は紙幣としては初めてのようです。

■身近な知的財産
 普段なにげなく使っている紙幣ですが、様々な知的財産が含まれています。身近なものを通じて知的財産を意識することは新たな創作活動に資する面もあると思います。皆様も今一度、紙幣を確認いただき、紙幣を通じて、知的財産を意識してもらえれば幸いです。因みに、紙幣と紛らわしい外観を有するものの製造、販売は「通貨及証券模造取締法」により禁止されていますので、捜査当局のお世話にならないようくれぐれもご注意ください。

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