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中部経済産業局知的財産室 原田貴志室長に聞く

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 中部経済産業局は中部地域を管轄する経済産業省の出先機関で、その中の知的財産室は、管轄地域の企業に対して知的財産に関するさまざまな支援を行っています。今回は、中部経済産業局の知的財産室の原田貴志室長にお話を伺いました。

Q 最初に、原田室長の略歴についてご紹介ください。
「特許庁において審査官として特許の審査業務に従事する傍ら、2018年に『デザイン経営宣言』のプロジェクトに参加して以来、デザイン経営に係る業務にも携わってきました。デザイン経営は、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営のことであり、中小企業がデザイン経営を実践できるようなハンドブックを作成しました。また、21年から2年間は内閣府の個人情報保護委員会へ出向し、その後、23年4月に中部経済産業局の知的財産室へ赴任しました」

Q 続いて、中部経済産業局の知的財産室はどのような部署なのかを教えてください。
「中部経済産業局は、愛知県、岐阜県、三重県の東海3県と、石川県及び富山県の北陸2県を管轄しており、富山には支局が設置されています。知的財産室は、中部経済産業局の中では、地域経済部のイノベーション推進課に属していますが、この課はことし4月1日にできました。元々は産学連携、標準化、知的財産などを担当していた部署があり、そこにスタートアップを支援していた担当が合流し、イノベーション推進課となりました」
「また、知的財産室は中部経済産業局の一課室であるとともに、特許庁の出先機関としての位置づけも併せ持っているため、私を含む2人が特許庁より出向者がおり、さらに、中部経済産業局の職員が1人の計3人の常勤職員と、非常勤の調査員の3人を加えた6人が在籍しています」

Q 知的財産室は、どのような事業を行っているのでしょうか。
「各地域の現状に応じた取組を行うべく中部地域知的財産戦略本部が設置されており、ここで定められた推進計画の方針に従い、活動をしています」
「さまざま取り組みがある中で、大きく三つの取り組みがあり、①知的財産の可能性や重要性を十分に認識していない企業向けには、普及啓発を目的としたセミナーを行い、②実際の支援が必要な企業には、専門家を派遣する伴走支援や事業のパートナー探しなどの支援を行っています。そして、③これらの支援結果を継続できるような体制を構築する支援も行っています」
「より具体的な支援としては、中小企業やスタートアップを対象とした専門家派遣などを行っています。この専門家支援は、対象となった企業の課題を抽出し、その課題の解決に適した専門家を派遣し助言する事業であり、4回の助言を行っています。ただ、4回の助言だけでは経営課題を解決することは難しいため、この事業をきっかけとして活用いただき、必要であれば、各県に設置されたINPIT知財総合支援窓口による支援を継続する場合や、専門家との直接契約による継続的な支援につながる場合が多いです」
「また、中部経済産業局の他課室でも知財を絡めた支援を行っており、例えば地域ブランドの推進においては、その地域の商工会議所、商工会、金融機関、観光協会とともに事業を実施しています」

Q これらの各種支援事業以外で、企業支援としては何かされているのでしょうか。
「知的財産室の職員自身は専門家ではありませんので、直接支援することはなかなか難しいことから、先述のINPIT知財総合支援窓口を紹介したり、各種のセミナーを紹介したりしています。各種のセミナーにお越しいただければ、登壇する専門家の方はもちろん、同じ関心を持っている参加者が多いため、参加者同士のつながりをつくることも可能です。このような間接的な支援が中心になっています」

Q これらの事業の他に、力を入れている事業はありますか。
「中部経済産業局ではデザイン経営にも力を入れています。私の着任前から続く、デザイン経営支援プログラムでは、デザイナーが、製品やロゴのデザインからではなく、企業の経営戦略の段階から支援に携わるもので、応募された企業に対して数回の支援を行う事業です。ただ、実際に企業支援を行ったことのあるデザイナーは東京や大阪に集中していますので、この地域において企業支援を行えるデザイナーを育成することも目的のひとつとして、デザイナーのOJTという色合いも含む事業になっています」
「また、来年度に向けては、特許庁で2020年より実施中のI-OPENというプロジェクトを中部地域でも広められるような企画を検討しているところです。知的財産を『収益最大化のための独占するためのツール』としてではなく、『社会課題を解決するためのツール』として捉え、社会課題を解決する仲間を増やすプロジェクトです。社会課題解決を目指すスタートアップ企業、非営利法人、個人など、これまでとは異なる対象の方に対して、社会課題解決に必要な、ミッション策定、ブランディングなどの多角的な支援を行うものです」

Q 知的財産室のウェブサイトからはメールマガジンの登録ができるのですが、こちらへ登録すればどのようなメリットがあるのでしょうか。
「メールマガジンには、中部経済産業局全体のものと各部課室のものがあり、知的財産室のメールルマガジンでは知的財産室が開催するセミナーや支援事業などの情報を配信しています。会社の事業規模、事業内容や抱えている課題に応じて、必要なものに登録して頂けたらと思います。また、各県には中小企業の支援を行う機関が設置されており、各支援機関のメールマガジンからもさまざま情報発信がされておりますので、そちらもご活用ください」

Q 話は変わりますが、中部経済産業局へ赴任する前にこの地域に対して抱いていた印象と、赴任してからの印象とは異なっていますか。
「赴任前から、産業として、自動車産業や航空機産業などのものづくりが盛んな地域という印象を持っていましたが、赴任してみると、名古屋市内にも伝統文化が多く残っており、ものづくりが地域の伝統文化としても、さまざまなところに根付いているということが印象的でした。伝統的なものづくり文化を盛り上げるという観点からも、少しでも貢献ができればよいと思っています。また、想像以上にスタートアップが盛り上がっているという印象も受け、今年10月に開業した『STATION Ai』はもちろんのこと、『なごのキャンパス』や『ナゴヤ イノベーターズ ガレージ』といったインキュベーション施設も複数生まれており、このタイミングで赴任できたことはありがたく思っています」

Q 最後に、告知したいイベントがございましたらご紹介ください。
「特許庁が主催する『つながる特許庁』というイベントが25年2月13日(木)に大垣市のソフトピアジャパンセンターで開催されます。この「つながる特許庁」は、今年度は全国9都市で開催される予定で、知財を活用している企業による講演などが行われます。内容につきましては、今後順次公開されていますので、特許庁のウェブサイトでご確認ください」

 既に知財を活用している企業も、これから知財の活用を検討している企業も、知的財産室へ積極的にアクセスすることで知財をより有効に活用できそうですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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