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キャラクターの著作権と商標権-はっぴょんを例にして-/弁理士 廣田 美穂

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  • 著作権

 日本弁理士会には“はっぴょん”というキャラクターがいます。今回は、キャラクターに関連する知財の代表的な権利である著作権と商標権についてお話しします。

【著作権と商標権のわかり易い相違点】
1.権利の対象(著作権の対象は「著作物」、商標権の対象は「商標」)
 キャラクターの絵や立体造形は「著作物」にも「商標」にもなり得ます。一方、キャラクターの名前(文字)は「商標」になり得ますが、「著作物」と認められることは稀です。
2.権利の発生
 著作権は「著作物」を創作した瞬間に発生します。一方、「商標」は、特許庁へ出願し審査を経て登録されないと、権利が発生しません。
3.権利の侵害
 著作権侵害に該当するには「他人の著作物に基づいて創作したこと」(依拠性)が必要です。オリジナルで創作し、かつ、それを明確に証明できれば、他人のキャラクターと同一でも、著作権侵害になり得ません(“はっぴょん”も、オリジナルで創作されたものです!)。
 一方、商標権は、登録商標(と似た商標)を、指定した商品・役務(と似たもの)と関連付けて使うと侵害になり、依拠性は不要です。例えば、他人の登録商標と似たキャラクターの絵や立体造形を、指定した商品の広告で使うと、商標権侵害になり得ます。このため、似た商標が登録されていないか、事前の商標調査で確認しておくのが無難です。

【自分のキャラクターでも他人に商標登録される!?】
1.「先願主義」に注意
 日本の商標法は、先に出願した人に権利を付与する「先願主義」制度を採っています。事前の商標調査で問題ないと確認できても、その後、他人(仮に「Aさん」とします。)が、あなたの創作したキャラクターを商標として先に出願すると、Aさんに商標登録が与えられる可能性があります。
2.Aさんの商標登録を潰せる?
 商標法には“他人の著作物と同じような商標の登録を潰せる”といった条項がありません。
 Aさんの商標登録を潰すためには、あなたのキャラクターがとても有名か、少なくともAさんの商標登録で指定した商品・役務の需要者によく知られていることを証明できなければなりません。あるいは、Aさんが、3年以上継続して、商標登録したキャラクターを、指定した商品・役務と関連して使っていないことを証明する必要があります。その他に潰す手続はあるものの、いずれもハードルが高いです。
3.対抗できる?
 Aさんの商標登録を潰せない場合、あなたがキャラクターをAさんの商標権の範囲で使うと商標権侵害になりますが、Aさんもそのキャラクターを利用するとあなたの著作権侵害となるので、実質的に、Aさんはあなたから許諾を得ざるをえなくなるでしょう。
 とはいえ、Aさんが、あなたとは別の他人に商標権を行使しても、あなたは指をくわえて見ているしかなくなる可能性があり、モヤモヤするかもしれません…。

【自分のキャラクターを自分で商標登録!】
 最も安全、かつ、ココロにモヤモヤが生じないのは、自分のキャラクターを自ら商標登録することです。著作権と商標権の2つの権利を持っていれば、お互いに足りない部分を補完することができ、より強力な保護策にもなるでしょう。
 このような理由で、“はっぴょん”は、名前(文字)だけでなく、絵についても商標登録しているわけです。

商標登録第4586464号


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